ソードダンス-4







 ぱぱぱーん。派手な花火と共にファンファーレが鳴る。
 校庭には円を描くように客席が並んでいた。
『さあ、皆様お待ちかねの剣術大会!
 只今から始まります。
 ルールは簡単。
 時間無制限で相手を倒した方が勝ち。
 攻撃方法は剣と体を使った攻撃なら、魔法以外何でもアリです!
 まさに真剣勝負! さあ、どちらが雌雄を決するのでしょうか!!』
声を拡張する機能を持ったスピーカーから、少年の解説が流れる。
『東、冷徹の剣士、生徒の護衛役チェリオ・ビスタ!
西、リフォルド家の跡取りであり、学園きっての優等生、シルフィ、リフォルド!』
 東側から白いマントをなびかせ、青年が颯爽と登場する。
 日差しを受け、栗色の髪が黄金色に輝いている。
「きゃーっ! チェリオ様ぁ〜〜〜」 
 女子達の黄色い歓声が喧しいほど響く。
 その興奮もさめやらぬウチ、ルフィが西側から歩み出てくる。
 歓声が一際大きくなった。
 いつものローブ姿ではなく、動きやすい格闘技に身を包んでいる。
「ガンバッテ下さい〜」
 隣からのんきな歓声。
 横を見ると校長がいつものような穏やかな笑みをたたえて、ぷらぷら片手を振っている。
「あの、校長先生……」
「はい?」
キッと校長の瞳をルフィは見つめる。
「棄権したいん――――」
 ルフィの真剣な瞳ももろともせず、校長は笑顔であっさり言い放った。
「却下」
「うっ。けど」
「ルフィ君。良いですか?
 確かに君は暴力沙汰は嫌かもしれません。
 しかし、いつの日かそう言う事態が起こっても不思議ではない。
 そのためにこういう事は必要です。
 たまに人と剣などを交えないと勘が鈍ってしまいますから」
「そ、それはそうかもしれないんですけど」
 ルフィは言葉を濁らせる。
 言ってることは正論だ。
 正論だが、校長の瞳はこれから始まる事への期待に輝いているのであまり説得力が無い。
「あの、でもコレって授業だったんじゃ」
「死なない程度に頑張って下さいね」
「あの。校長先生? 死なない程度って」
「いや〜。チェリオ君のことだから、試合に熱中して『本気』でしかねないかな〜
 とか危惧してるだけですから。ちょっとだけ」
 いや、そんなことは流石にないだろう。と言いかけで考え込む。
 確か、さっきの試合も少し本気でやっていなかっただろうか。
 彼が本気で来ることは、あり得る。
 もの凄くあり得る。
 ルフィの背に嫌な冷や汗が流れる。
「皆さん期待してますし、あそこにいるクルト君なんか特に」
「ルフィーガンバ〜〜〜〜
 チェリオなんかぶっ潰せー!!」
 校長の指さす方を見ると、成る程。クルトがぶんぶん片手を振って元気よく応援している。あまりにも勢いが良いので二つに結んだ彼女の髪の毛が左右に激しく揺れていた。
 かなり期待されているらしい。
 トドメに校長のだめ押し。
「ルフィ君が止めるって言ったらきっとクルト君。
 自分が出場するって言い出しますよねぇ」
「……やります」 
密かな校長の脅しに、ルフィは折れるしかなかった。
『では、そろそろ試合開始のようです。
 司会者はボク、マルク・バスタードと。
 機材その他の提供はエミリア・マインドさんでお送りします』
『おーっほっほっほ。ルフィ様頑張って下さいませね〜〜〜〜っ。
 応援いたしておりますわっ』
「エミリアさんも来てたんだ……」
『では皆さん、試合会場をご注目管さーいっ! まもなく試合が始まります!』
 ルフィの小さなつぶやきは、スピーカーの声にかき消され辺りには聞こえなかった。

 




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