闇に潜む凶銃
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プロローグ
《白い霞から約一名。戦闘員失踪》
「消されたんじゃなくて失踪だと?」
箱のような部屋の中に機械的――コンピューターの声が流れ、低い男の声が響く。
《YES。戦力が著しく低下》
「くそ、なんてことだ。腐敗しきった貴族連中にこれから眼に物を見せてやろうと思っていたのに!」
《戦力低下、戦力低下、戦力低下》
無機質な機械の声が繰り返される。男は拳を机に叩き付け、
「そんなことは分かっている。繰り返すな!」
《了解。しかし〈ブレイン〉が居なくなると今後の作戦に大幅な支障をきたします」
「……ちっ、何故アイツはいなくなった。今どこにいるか調べろ」
《三日前、バスターニャが治療と称しておかしな行動をしていた模様。そのためと思われます》
忌々しげな男の言葉に機械は淀みなく答える。
「あの三流研究者め、目障りだったがやはり捨て置けないな」
《目標……『ブレイン』発見! 現在地、紅い傭兵》その言葉に男は眉を跳ね上げた。
「《紅い傭兵》だと? あの集団か? あの部隊は我が暗殺者集団《白い霞》の表の別部隊か? 連れ戻せ」
《連れ戻すことは現時点では不可能!》
「なぜだ!我が指揮下にある部隊だぞ」
《ナンバー1035。〈重要〉原則として各部隊からの引き抜きは厳禁。例外は認められません》
「くそっ、そういうことか。まあいい、バスターニャの居場所を検索しろ」
《検索不能。バスターニャはすでに死亡》
「ふん。やぶ医者め……」
男は舌打ちをし、また新たな計画を頭の中で練り始めた。
―――戦争に紛れ、貴族の大半を暗殺する計画を。
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