運命的出会い!?-4







「何だ? 誰も居ないのか?」
 消毒液や、色々な薬のにおいが立ちこめる保健室の中を見回して
 チェリオはため息を付いた。
 ルフィは「だいじょうぶ」だと言って、途中で無理矢理引き返させた。
(仕方ない……ベットを借りるか?)

 がたっ

「……誰かいるのか?」

 がたがた

 物音。そして、

「なんだ!?」

「るるるるー。ここかなーーー。それともこっちでしょうかぁ」

 聞こえてきたのは何故か鼻歌。しかもかなり御機嫌のようだ。

「……しかし、声は聞こえるのに姿が見えないな」

 歌は聞こえるのだが、どこにも姿が見えない。面妖だ。
 歌の出所をたどってみると。
 足下から視線が徐々にせり上がり、そしてベットを通り過ぎて更に上。
 そして……………天井にたどり着く。
「いた」
 そう、いた。天井を飛び回っている人物が。





「おい」
 取り敢えず声をかける。
「るるるるるるー」
「…………………おい」
「らららららららー」
「………………おいっ!!」
「らら……はら? あらー。どちら様でしょうか? もしかして保健室にご用がおありなんですかぁー?」
「当たり前だ」
「はいー。それで何のご用ですぅ?」
(…………わからんのかこの女)
 今の彼の顔は青ざめるを通り越して、熱で赤くなっていた。
「あぁっ! こんなところにありましたぁ。ありがとーございます」
 ピンクのふわふわの髪の毛を跳ねさせながら、彼女はゆっくりと舞い降り、
 そしてチェリオの側にある薬瓶を手にとってにっこりと微笑んだ。
 どうやらそれを探していたらしい。
「…………」
 その脳天気な微笑みに一瞬めまいを覚えるが、彼女の背中についている羽根をまじまじと見つめる。
 純白の鳥の羽。平たく言えば天使の羽だ。
 その視線に気づいたのか、彼女はひょこっと一礼をし、
「あ、私は自称天使のえんじぇですー」
(………………………自称?)
「何故かー、皆さんがそう言うんですよー。だからそうなのかなー? と」
 微笑みながら話す彼女に、何故かチェリオは激しく嫌な予感がした、が
「あらー風邪みたいですねぇ。お薬出しますね」
 彼女が次の言葉を発した時点でそれもかき消えた。
「ん、ああ、たのむ」 
 ピンクの髪の天使は軽い足取りで薬棚へ向かっていった。
 そして、持ってきたのは―――――
「何だそれは」
 チェリオは頭痛がますます非道くなった。
 彼女の手に握られていたのは注射器だった。
 しかも普通よりかなりでかい。
「なにってー。お注射ですー」
 彼女はにっこりとこたえ、その鋭い針の切っ先をチェリオに向けた。
「いや、何で注射なんだ? 薬だろ普通」
 にこにこと微笑みながら近づく彼女にじりじりと後ずさりながら聞く。
「あらぁ、知らないんですか? 注射の方が治りが早いんですよぉ」
 笑みを絶やさず答える口調はどこか嬉しげだ。
「……そうなのか?」
「そうですぅ」
 のんびりした口調だが、キッパリと言い切った。

 結局、有無を言わせない彼女に負けチェリオはでっかい注射器の餌食となった。
「う〜〜〜〜〜」
 のは、いいのだがさっきから体の調子が優れない。
 風邪とは違った怠さで体が鉛のように重い。
「ぉい、変なの入れてないだろぉな……すげー具合わるいんだが……」
「あらぁ、だいじょぉぶですー。ちゃんとしたお薬を入れましたから、きっとさっき飲んだ睡眠薬が効いたんですよー。寝れば全快ですー」
 えんじぇはそう言ってチェリオの背中を押して保健室のベットに連れて行く。
 白いシーツのベットに寝せられたチェリオに向かってえんじぇは、
「子守歌歌いましょうかー。すぐ寝れますよぉ」
 なぜかこう申し出てきた。別に断る理由もなかったので頷くチェリオ
 彼女の歌い始めと同時に彼の意識は闇へと埋没した。

 




戻る  記録  TOP  進む


 

 

inserted by FC2 system