りとるサイレンス-7






「『黒の帳が金色の瞳を開くとき』金色の瞳…これはつまり月を指す」
 文字を指さし、説明を始めるチェリオ。クルトが首を捻って問いかける。
「でも何で月? 金色なら『太陽』『夕日』とかあるじゃない」
「……ほぉ……ちょっとは頭は回るみたいだな」

「まあね〜……『ちょっとは』ってどういう意味よそれ!」
 感心したようなチェリオの言葉にクルトは頷き掛け、頬を膨らませる。
「細かいことは気にするな。まあ、そう言う方面でも見れるが『黒の帳』というのは何だ?昼間の太陽や夕方には当てはまらないだろう」
「うっ……確かに」
 落ち着いたチェリオの言葉にクルトは言葉を詰まらせる。
 何かを思いついたのか手をポンと打つと瞳を輝かせ、身を乗り出す。
「あ! でもでも! 黒の帳……って事は劇場とかに関係あるんじゃない?」 
 チェリオは嘆息し、
「俺もそう思って真っ先に劇場に関することを調べたがここの近くには劇場はない。
 ついでに劇場跡も、移動劇団なんぞも一切無い」
「そーかぁ」
 チェリオの言葉を聞きクルトは残念そうに肩を落とす。
 本を閉じ、立ち上がると地図を開き遺跡の場所を指さす。
「混沌への扉は……つまりあの遺跡のことだ」
「何で?」
「……お前、少しは自分で考えろよ」
 「何で?」を連発するクルトを呆れたように見つめる。
「考えてるわよ!考えてるけど分かんないから聞いてるの!」
「……そーか。じゃあ言うぞ」
 ほぼ諦めたように嘆息し、地図を丸めて元の場所に戻す。
「あの遺跡には『リトルサイレンス』が封じ込められている。そこまでは知ってるな」
「まーね。あの馬鹿モンスターーーー!!
 次にあったときがアイツの命日にしてあげるわ。ふ、ふふふふふふふ」
 含み笑いを漏らすクルトから僅かに遠ざかり、
「だ、だからだな……『混沌への扉』つまり闇のモンスターだと思われる『ヤツ』を封じ込められた遺跡への扉は『混沌への扉』だと」
「解釈できるって訳?」
 含み笑いを止め、真顔になったクルトが問いかける。
「そうだ」
 チェリオは小さく頷いて同意する。
「でも何で四日後なわけ?」
「さっきも言ったと思うが『金色の瞳』は月のことだ」
「それは分かったわよ」
「で、『黒の帳が金色の瞳を開くとき』黒の帳は夜。金色の瞳は月。
 そして瞳を開くとき。ここまで言えば分かるだろ」
 チェリオの言葉にクルトは頭を捻る。
「開く……」
「月はいつも満ちているとは限らないぞ」
「まさか……月の満ち欠けのこと!?」
「そうだ。月は満ち欠けがある。
 つまり、月が瞳を開くときは……」
『満月!』  
二人の言葉が見事に唱和した。
「まさか四日後……」
「四日後に月が満ちる。そして恐らく扉もその時に……それまで自由行動だ」
 クルトの言葉に頷いて告げる。
「…………うん」
 チェリオの言葉にクルトは虚空に視線をさまよわせ、歯切れの悪い返事を返した。
 クルトの様子に眉をひそめ、
「何だ? 乗り気じゃ無さそうだな」
「別に」
「ならいいが、せいぜい足手まといにはなるなよ」
「……分かって、るわよ」
 チェリオの言葉にクルトは小さく返事を返すと天井を見上げて吐息を吐いた。






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