「ずれ始める刻」 時は移ろう。人も同じ。 そして紫水晶のような髪を持つ魔導師見習いの少女もそうだ。 少しずつ、少しずつ。少女は変わる。 一歩ずつ一歩ずつ前よりも進んでいく。誰も分からぬ場所へと。 『変わり始めたか。何かが――』紅色の図書室で、チェリオは静かに瞳を閉じた。
「ダイス」 興味本位でチェリオと共に入った酒場。 様々な意味で興味深いウワサ。いかにも怪しい魔導師姿の旅人。 年端もいかぬ少女をどうこうしようとするごろつき達。 思わず助けに入ろうと立ち上がり、倒れたのは絡んだ男達の方だった。 『あなた、魔導師ね。死んでちょうだい』 掌でダイスを弄び、紅い瞳の少女は腰まで伸ばした髪を揺らして、クルトの紫の瞳を見た。
|